「時制(tense)」は文法範疇と語形、そして、それの表す観念自体、つまり現在・過去・未来のこと
辞書では、なぜかtenseは語形を言うとしか書いていない。けれども、文法の話をしていて、「時制(tense)」が語形を言うだけだと不便この上ありません。「時制」は現在・過去・未来という時の概念自体を指して使われてきていたと思いましたが…
ランダムハウスにありました。これもなぜか、学習者向けのほうには書いていないのですが、
tense 2 (Random House Unabridged Dictionary of American English © 2017) |
とあります。日本語でも、ランダムハウスさんにはあります。
[名詞] 3〔文法〕 時制:1のような範疇によって表される時(過去,現在,未来など). cf. ASPECT 10. (ランダムハウス英和大辞典) |
依頼の助動詞
私もこれまでにもいろいろな意見に出会って混乱気味でしたけど、基本は教科書通りで間違いないです。ネイティブに質問したところ(@ StackExchange.com)、やはり場面に寄るのです。もちろん態度や声のトーンも関係してくるでしょう。
Can you ~? カジュアルな依頼。基本の意味は能力や都合。
Will you ~? カジュアルな依頼。基本の意味は意志。
Could you ~? 丁寧な依頼。基本の意味は能力や都合。
Would you ~? 丁寧な依頼。基本の意味は意志。Could you ~? より丁寧とされる。
さらに丁寧な言い方が、Would you mind ~? 親しい間柄には不自然で、かえって馬鹿丁寧な嫌みにも使えてしまうわけですが、見知らぬ人に何かを頼むようなときは、これが適当です。
カジュアルの意味は、家族、友人、同僚など親しい間柄。ここに丁寧過ぎる言い方を使うと不自然だし、かえって嫌みだったり冷たく感じられてしまいますよね。
タクシーの運転手に急いで欲しいと頼むのにも、特に道が混んでいて無理な相談でもない限り、Will you hurry? でも構わないようです。声のトーンにも寄るでしょうし、Excuse me but… などを添えればさらによいでしょうね。しかし、安全運転してもらいたいですし、あまり頼んでも仕方のないことのような気がします。
レポート:現在完了形の「現在とのつながり」とは
よく言われる大事なポイントは、現在完了は「現在との繋がり」がないと使えない、ということですが、そう言われてもまだ分かったような分からないようなことはありませんか?
今回、StackExchange.com で盛り上がっていた質問は、どうして“The Chinese have invented the printer”とは言えないのかというものでした。文法書に「完了形は現在とのつながりがなければ使えない」とあるが、プリンターは今もあるから使えるのではないか、というものです。
しばらく試行錯誤のコメントをしながらネイティブたちが、こういう時なら言えるよ、と言い出しました。
先生:"Class, tell me, what have the Chinese invented?"
生徒A:"The Chinese have invented the printer."
生徒B:"The Chinese have invented paper."
生徒C:"The Chinese have invented Chinese food."
これなら問題なく言えるということです。
そして、閃いた人が現れて素晴らしいアンサーを書いてくれました。
そうなのですね、文脈なのです。「現在との繋がり」は文脈にあるかどうかです。けして、プリンターが今も存在するかどうかではないのでした。
上の例で先生が出した問題は、現在完了形を使うことで効果的に「これまでに」という現在とのつながりを言外に言っているのです。“What have the Chinese invented up until now?”と言ったのと同じことになるのです。
これがもし、このような脈絡ではなく、単に史実を言いたい時に現在完了形で “The Chinese have invented the printer” と言うと、ネイティブは現在との繋がりを期待して、よく分からないけど何か最近、革新的なプリンターができたの?などと思ってしまうのです。
そういうわけで、単に史実、過去の事実として、中国人が大昔に(※古さの問題じゃないですが)印刷機を発明したことを言うなら
“The Chinese invented the printer.”
と過去形にするのが正解なのですね。
(完了形については英語圏でも専門家が200年以上論議してきて、やっとこの10年くらいで意見がまとまりかけてきたくらいだそうで、アメリカよりイギリスで好まれるといった場合 や、特に口語では個人差もあり、いつもはっきり完了形を使った理由を言い切れるわけでもないそうです。)